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タグで日記を手打ちするのが面倒になった、 ダメな感じの人が書く、 タメにならない日記。
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いい加減わたしは漫画を買うべき、

と購入予定日とか棚の都合とか考えてしまう時点で負けました^q^

***



なんの誇張もうそもない、ひどく陳腐な表現。
もしかしたら、思い込みくらいはあるかもしれないけど、
でも俺にとって彼は、紛れもなくそれだった。

”きゅうせいしゅ”



---

恐怖に足が竦む。よくよく考えればわかることだった。
あれだけの距離がありながら、奴らの足音は靴の底から嫌という程響くのだ。
遠くの屋根に立ち、眺めているだけで、
(知っていたはずなのに、)
走ることには自信があった。だから万一、自分が巨人に追い詰められたときだって、
奴らの手の届かないような建物の隙間に、逃げ込んでやろうと。
敵わなくとも、足掻いてやろうと、
(逃げろ、)
近過ぎる地響きに身体が揺れる。
奴らが鈍足を浮かせる、その間ですら止まらない震えはただの恐怖と絶望だった。
(逃げろ逃げろ逃げろにげろにげろにげろにげろ)
ガチガチと音を鳴らすのは骨か歯か装置の金具か、それすらもわからず、
ただただガスの切れたボンベは情けない音を繰り返す。
奴らの気味の悪いその、にたりと笑っているのだろうか、その口だって今は屋根の近く、
まだこの瞬間に走れば何かが変わるかもしれない、それなのに、
この両足は根を張ったように頑として動かない。
(動け、うごっ、け、)
動かない。
動かない。

――――――――、!!

その、気分が悪くなるほどの、視界に入りきらない体躯が、ゆうらりとこちらを向く。
目があったなんて思いたくもない。そうしていっそうと歪むその顔面に、
一切の抗いを、うばわれて、
(く、われる)
今まで喰われた仲間たちは、先人は、こんなきもちだったのかと、

(おれはここでおわるのか、)




―――ザシュッ!!!!

「?!!」

一瞬、糸が切れたように動きを止め、その後ぐらりと放り出されたその巨体。
思考がとまったままの頭では何が起こったのかよくわからない。
ずうん、と再度響く地響きは巨体が地に落ちた音だった。
もうもうと立ち込める砂埃と蒸気の中、ざりっと小気味よく音をたてたなにか。間違いない、人間の足だ。
思わず身体が一歩下がり、それが自分の足だと気付いてからようやく、
(…うそ、だ、)
息の仕方を思い出した。
(生きてる…?)

「あーぶなかったねえ!大丈夫ー?」

背の高い男だった。自分と同じ、剣兵団の上着を着た、やたら陽気に笑う男。
ざっざっ、ざっざっと音をたてるその男の、人間の足音に、俺の身体の中でぶつりと緊張の糸が切れた。
力が抜け、勢いのまま地面についた膝頭が痛い。
いたい、ああ、まだ生きてるんだと、荒々しい自分の呼吸が聞こえる。

「ほらほら、さっさと逃げないと、」

そんなことを言われても俺の腰は立たなかった。だって、これからどうしろと。
内壁までの道のりはまだ遠い。ガスも無く、自分の足だけで、巨人の手から逃れるだなんて。
言いながら男は何かに気付いたように、俺の腰にぶら下がった装置に触れる。
かすっ、かすっと力無く息切れを繰り返すそれを一瞥すると、ぐいと力任せに俺の腕を引っ張り上げた。掴まれた腕が痛い。
膝はまだわらっているが、立てと言われ、なんとか俺は足の裏で地面を踏みしめた。
服越しにも分かる固い手のひら。それだけでもわかる。この人はきっと、強い人だ。
(俺なんかとは、ちがう。)

がちゃん!!

「…えっ、?!」
「あ、残ってる剣はちょーだい。もったいないから。」

いきなり軽くなった身体。足元を見れば、纏っていた立体機動装置が地面に転がっている。
男は手際よく落とした剣を自分の腰に収めていく。情けないことに、俺の腰元に刺さっていたそれはほぼ未使用品だ。
がちん、がちん、と金属が音をたてる中、目の前で何が起こっているのか、俺にはわからない。
ただ、耳の後ろのその向こうでは、まだあのおぞましい足音が止まない。
そうして最後に男が上着を脱ぎ捨てたとき、俺はようやく自分の丸腰具合に気がついた。
身を守るには、あまりにも軽過ぎる身体にぞっとする。

「え、えっ、ちょっと、」
「ねぇ、君何期生?」
「え、あ、209、ですけど。」
「そう。じゃあこれからだね。」

これから。移動手段も武器も無い(半分は奪われたけど)俺に、これからなんてあるのだろうか。
むしろ生きていることが絶望的だった。足先を見つめながら思う。
いっそあのまま喰われていれば。ああでもそれでは、この男に剣を渡すことはできなかった。
どちらにしろ、これ以上生き延びるのは不可能で、それは仕方の無いことだと思った。
だって、自分が生き延びる必要性は、とくにない。
世界が、人類が必要としているのはきっと、この男のような人間なのだから。

「乗って。」
「…はい?」

ほらはやく、と向けられたのは、耐Gベルトが露わになった広い背中。
この男が何を言っているのか本気でわからない。背中に乗れと?おぶされと?

「そ、そんな、無茶です!!!」
「大丈夫だって、君小さいし。」
「そういう問題じゃ…!だ、第一、俺なんか助けなくても」

そのあとの言葉は、腹を蹴飛ばされた所為で口にすることは出来なかった。

「ぐぁッ!!!、、げほっ、」
「…なに、君、自殺志願者?」

吐き捨てる男の目は冷たい。
俺はなんとか地面から身体を引き離す。
ずうん、ずうん、とあの揺れが響いている。

「そ、そういう、」
「俺なんか?なに言ってんの?自分の命が惜しくないわけ??
 だからアンタは走れない、飛べもしない!この剣だって無意味なもんだねえ!!」
「……う、」

返す言葉もない。言い返せない。
見下す男の目すら見返せない、地面に這いつくばったまま、ただただ自分の無力さに絶望する。
男はまるでひとり言の様に言葉を続ける。

「ひとつ教えてあげる。ここは○○地区西ブロック北4キロ地点、
 状況は半径500m内に10m級前後の巨人が4体。
 とりあえず奇行種はいないけど俺らが見つかるのも時間の問題、
 俺の勘だとまぁあと1分後には狙われるね。」

なんでもないことの様に男は言う。
きっとそれは事実なのだ、さっきから地面の響きが近づいてるのを、じりじり俺は感じていた。
必死に、気付かないように、しているだけだ。

「そうすればおめでとう!アンタはめでたく巨人の腹の中、でも残念!
 ……俺は巨人の食事を眺める趣味はない。」

次第に演説がかる男の言葉がふと途切れて、ひやりとした目がこちらを向く。
まるで首もとにその刃が当てられているかのようで、
ごくりと息を飲み込む、それすらもできず、背を汗が伝う。1ミリたりとも動けない。
俺の胸ぐらをつかみ上げ、男は最後にこう言った。

「そんなに死にたいなら壁の向こうで俺が首を落としてやる。」

それはとても、幸福なことのような気がした。


---


そこからのことは、速すぎて正確には覚えていない。
とにかく俺は男の背にしがみつくことに必死だった。
余計に動かないこと、決して腰を落とさないこと。それだけに全神経を集中させていると、
突然上に引っ張られる感覚に襲われ、壁に着いたのだとわかった。
程なくして男の足が水平な足場に到達し、ワイヤーが腰元に完全に仕舞われると、
強ばっていた全身から力が抜け、俺は荷物のように男の背からどさりと落ちた。
どくどくと音をたてる心臓。高所に吹き抜ける風に汗が晒されていく。見下ろす町並みにはまだ、巨人が、
(しんじられない、)

「分隊長!!どうしてここに、」
「ごめんごめん、すぐ戻るからさ。ガスだけ補給さして。」

からんからん、と男の捨てたボンベが音をたてた。それを俺は信じられない気持ちで見つめる。
まるで風になったかのようだった数分間。
2人分の身体を支えたあのボンベに、どれだけガスが残っていたのだろう。
自分が小柄とはいえ、ひと一人を背負った男の身体に、どれだけ、

「…彼は?」
「あぁ、一応兵士だよ。後で絞るから、配属と名前だけ聞いといて。」

男はそれだけ言うと、次の瞬間には壁から飛び降りていた。バシュンッ、とワイヤーの音が遠い。
俺が呆然としたまま動けないでいると、男に指示を出されていた兵士が、言われた通りに配属と名前を聞いてきた。
配属を名乗ると、兵士の表情が曇る。薄々は感じていた、他の仲間の安否のことだろう。
男に会ったあの場所に至るまで、俺だって見たくもない奴らの”食事”を目の当たりにしている。

「あ、あの!」
「なんだ。」
「あの人、は、…?」

なにも知らないのか、と兵士が呆れるように言った。
遠く向こうの屋根の上、みるみる小さくなっていく男の姿から目が離せない。
だって、その姿はまるで、

「調査兵団分隊長、キタ分隊長だ。今しがた外壁調査から戻ってこられたばかりなのに――。」

(すごい、あんな、)
ふわふわ、ひらひらり、まるで羽根が生えているかのように男は飛ぶ。
きっとあれが、本来の男のスタイルなんだろう。背負われていた己が恥ずかしくて仕方なかった。
あっという間に男は巨人の群れまで到達する。奴らは男に気付いているのだろうか。
男はひらりと高く飛び、次の瞬間には巨人の首元へ急降下して項を狩る。
その巨人はぐらりと落ちる、だが男の周りにはまだ数体の巨体が揺らめいている。
うち一つの腕が、男へ照準を合わせた。

「……ッ!」

ぞっとする、それも一瞬で、なぜならすぐにその腕を持つ巨体が落ちたからだ。
目を凝らせば剣を持った兵士がさらに上で舞っている。そして男はそれを知っていたのか、
既に別の巨人に標的を合わせていて、息の合うとはこういうことかと思った。

(まるで、蝶みたいな、)

二人の兵士が次々と巨人を落とすその姿は、
今まで見たどの戦闘よりも鮮やかで魅力的で、目が離せなかった。


---


「あーつっかれた!ねぇゆっきー、今日何体やった?」
「…19。」
「あっちくしょう負けた、俺15。」
「お前が途中遊んでたからだろ。シロにもバレてる。」
「うっそマジで?…でももしかしたらっていうか、やっぱ可能性としてはさ、」
「…おい、なんだあれは。」

門をくぐったその先に、敬礼を構える小柄な兵士が一人。

「……ちょっとね、拾ってみたんだよ。」

なかなか筋がいいかもね、と満足そうに男は笑う。
隣の男はじとりと兵士を見つめると、知るかと呟いた。

夕暮れの錆びれた街に、小さな兵士の宣誓が高らかに響き渡った。


fin.

***

きたりんファーストコンタクト書いてみた!(゚∀゚ )
ちょっと色々アレだけどうん原作の鬱々しい感じで妄想するのは私には無理や…
年齢設定はきた(28)、りんくん(15)、ゆっきー(25)くらいなイメージ。
この後りんくんが頑張って経験詰んだり訓練したりその中で
「ゆっきーの戦い方を真似してごらんよ」とかきた氏が言い出したりとかするといいなとか
あときた氏は基本的に臨機応変+自己都合でよく戦術離脱したりするから
しろ君にイラっとされてればいいと思います。その点はしくんは忠実だよね!!

つぎはきたゆきをどうにかしたいです…げふっ
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