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タグで日記を手打ちするのが面倒になった、 ダメな感じの人が書く、 タメにならない日記。
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男の人のマニキュアっていいと思うんですが三次元になるとどうしても
ただしいけm(ryになってしまうのはもう仕方ないと思うんだよね!
爪に色が乗るだけなのになんでこう、あんなにもカマくさくなるんだろうね…
そんなマニキュア妄想の成れの果て。



***


その黒い爪に気付いたのは、彼が楽屋に入ったのとほぼ同時。

「理人さん、それマニキュア?」

同じくそれに気付いたメンバーが問うと、
彼は鞄を下ろしながら、え、ああ、と思い出したように応えた。

「昨日の撮影でね。落とすの忘れちゃったんだけど、まぁ今日撮りないしいいかなーって。」
「へー、見せてみせて!」

はしゃいだ様に数人が彼を囲んだ。なんとなく自分がそれに乗じることは憚られて、
俺は黙ってスマホをいじっていた。彼の爪をからかう声が聞こえる。
画面をすべる自分の爪には、当然だが何色も乗っていない。
先ほどちらりと見えた彼の爪は黒っぽかった。不思議とあまり光沢は無かったような気がする。
…近くまで行けば難なく確認出来るだろうに、なかなか俺の腰は持ち上がらなかった。
そのうち誰かが呆れたように言った。

「今日は無いけど、明日収録あるでしょ、どうせ。」
「……げっ、そうだったマジかよー。」

落とすもん持ってねーよさっちゃんに頼もう、と彼は少し面倒そうに自分の爪を眺めた。
そんな彼をメンバーは笑いながら、そういえば、とすぐに違う話題に移る。

そうか、すぐにあの色は落ちてしまうのか。勿体無い。

結局俺は一言も喋らないまま、見てもいないスマホの画面をずるずると撫でていた。


***


その日はおよそ一ヶ月ぶりの逢瀬、という程ロマンチックでも甘ったるくもないが、
俺は仕事を終えるとリーダー…しろ君の部屋に向かった。
有るようで無いような、吹き飛ばされる寸前の煙みたいなこの関係が始まってどれくらいだろう。
わからないけれど、俺もしろ君もその煙を吹き消さなかったから、
未だにこんな関係が続いているわけで、
少なくとも俺はそこまで支障も不快も感じていなかった。
シャワーを浴び終えた俺がソファにもたれ掛かっていると、いそいそとしろ君が近寄ってきて、
こっちに座って、と俺をソファの下に座らせた。
彼がこんな風に言うことは珍しい。

「…結構コレ匂うんだね。」

そう言ってしろ君は、新品らしい小さなびんを開けてからしばらく、
俺の右手の爪とそれはそれは真剣に格闘している。
最初は色々と抗議の声を上げてみたものの、しろ君がまったく譲る気がないのを悟ると、
面倒になって好きなようにやらせていた。うちのリーダーは地味に頑固なのだ。
鼻につくマニキュアの独特な匂いが部屋に充満する。
一方俺は、片手を離せないとなると案外動けなくなるもので、
やることもなくぼんやりとしろ君の手元を眺めた。
ついこの前――先々週くらいだったろうか――撮影の一環で施されたマニキュアを思い出す。
エナメル光沢の無い、マットな黒色だった。割と綺麗だったと思う。
彼もそれを見ていたのだろか、今塗られている色は比較的それに近い色をしている。
お気に召したのかもしれない。
もうすぐ4本目の爪を塗り終わるところだ。

「…しろ君、」
「なに。」
「それ、自分で買ったの?」
「………そうだよ。」
「どこで?」
「ネット。」

意味のない会話をしてみても、彼の真意はよくわからないまま。
程なくして小指まで塗り終えると、彼は詰めていた息をゆっくりと吐いた。
やりきったと言わんばかりの顔でびんを閉めながら、
ちゃんと乾かしてね、と俺に釘を刺す。
まだぬらぬらとした爪は、何も塗らないそれに比べてひどく重い。
早く乾かないものかと、俺が無意味に右手でテーブルを叩いていると、
洗面所から水音と歯ブラシの音が聞こえてきた。
…え、うそ、この人もう寝る体勢じゃね?

「ちょっとしろ君、これ片方しか塗らないの?!」
「片方?……あ、」

結局、俺はそのままベッドに入ることになってしまった。



その日、ぼんやりとしたサイドライトに当てられながら俺たちは抱き合った。
久しぶりだったけどそれだけで、相変わらず彼の身体はすんなりと俺を飲み込んだ。
ただ、彼は余程黒い爪が気に入ったのか、隙さえあれば俺の右手に手を伸ばしては、
まるで細長く甘い飴を舐めるようにひたすらに指をしゃぶっていた。
多分キスよりも長い間そうしていたと思う。お陰で若干指の腹がふやけたのに、彼は気付いただろうか。

執拗に、入念に、飽きることなく。
顎が疲れるんじゃないだろうかと思うほどに舐められて、
そのうち溶けてしまうかもしれないと、熱がまわる頭でぼんやり思った。
時折様子を伺うように、彼は俺の顔を覗き込んだけれど、
正直言って自分がどんな顔をしていたのか全く覚えていない。
それでも、ひた隠しにされている強烈な欲の欠片が、
彼の眼からちらりちらりと零れていた、そんなことは覚えている。
(あんな風に、見えるのは)
めずらしいと思ったが、程なくして気がついた。
(ちがう。…はじめて、だ)

彼はどうして、この爪にマニキュアをのせたんだろう。
試しに自分で舐めてみたが、とくに味もしないし、彼の思惑がわかるはずもない。
唾液に濡れた爪には微かばかりツヤがのり、塗り立てのぬらぬらとしたあれを思い出させる。
あの、呼吸器に蓋をされたような、重く深く———くるしい色。

朝起きたら、珈琲を淹れて、左にも同じ色を塗ろう。
幸い右手が使えるのだから、まぁ一人でもなんとかなるだろう。
彼はなんと言うだろうか。


漂っていただけの薄い煙が、少しずつ、昇り始めた。




おしまい。

-------

・なんとなーく、くっついてるようでくっついてないきたしろ
・このしろ君は北に対する対応がとってもドライ
・ドライだけどでも本当はすっごい好きなんですどろどろしちゃうくらい
・でもとてもドライなしろ君
・だからドライな気持ちで付き合ってた北
・もっと甘えてくれてもいいのになー と思うのは年上精神半分、愛情半分
・そんな二人の関係がちょっと変わるかも?かも?みたいな話にしたかった
・1ミリずつ進んでいく感じ すごいまどろっこしい
・そんなきたしろもいいと思います(*´д`*)

あとしろ君が片手塗り忘れたのはがち、
というか気力がもたなかっただけ^^
マニキュア塗るの大変なんですよねアレ
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