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タグで日記を手打ちするのが面倒になった、 ダメな感じの人が書く、 タメにならない日記。
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ジンきた美味しいよジンきたにやにや
あいも変わらずクズ生活してますがまだまだ楽しいです(…
でも買い物すると働かなきゃなーと思います
家で妄想してるだけなら別にいいんだが…

どうしてこうも私の趣味は金がかかる^q^

-------

それはとても些細なことばかりだった。

たとえば楽屋での風景。
その日の彼はソファに横になって、仮眠をとっているようだった。
頭からタオルを被っていてその顔をうかがうことはできないが、
睡眠時間が十分にとれないことも多いこの仕事では、とくに珍しいことでもない。
彼が呼ばれるまで寝かせておいてあげようと、皆が(比較的)静かに過ごしていた。

たとえば移動中の車の中。
まだ疲れがとれないのか、メンバーの会話に参加することもなく、
彼はうつらうつらと車に揺られていた。
時折イラついたように眉間を押さえている。
…彼のスケジュールを全て把握しているわけではないが、
そんなに仕事が詰まっていたのだろうか。

収録中はさすがというべきか、「そういうもの」は見られなかった。
けれど普通じゃ気にならない程度に、所々身体の動きが緩慢なようで、
ちょっとした移動や待ち時間の間、長い手足がひどく重そうに見えた。

「「「ありがとうございました、お疲れさまです。」」」

その日の夕方頃、時間が押すこともなく無事にメンバー全員での収録が終わった。
彼は楽屋に戻るとすぐに煙草を手に取って、再び廊下に出ていった。
喫煙所へ行くのだろう、ヘビースモーカーの彼にはよくあることだ。
普段はただ見送るばかりだけど、どうしても俺は気になってその背を追いかけた。
気のせいかもしれない、全部が気のせいであればそれでいい、ならばただの勘違いだ。
追いかけた猫背が、いつもより丸いような気がする、それさえも。

「北くん、」
「…どうしたの?ジンくん。」

呼びかけに気づくと、彼は振り向いてその足を止めてくれた。
喫煙所の手前の廊下で追いついた俺は、さっと一瞬だけ周りを確認してから右手を伸ばした。
彼は少し不思議そうな顔で、ただなりゆきを見ている。

「…ッなに、」

触れたのは、彼の耳の少し下。
途端彼は困ったように――というかめんどくさそうに、眉を寄せて、俺の手を払う。
皮膚が薄く柔らかいそこは、少しばかり熱かった。
まるで子供の体温だ。

「ねぇ、体調悪いんじゃない?」
「…そんな大事じゃないって。」
「いつから。」
「…昨日かな、多分。」
「マネージャーさんは?」
「知ってる。薬も飲んでるよ。」

責めるような口調になってしまうのは無意識だった。
同時にひどく胸の中がむかむかしていたが、
この憤りをどこにぶつければいいのか分からず、俺はそれを飲み込むので精一杯だった。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、めんどくさそうに彼は続けた。

「平気だよ、俺今日この後撮りないし、取材だけだし。
 レコーディング前に喉痛めるわけにいかないしね。」

そう、彼の言う通り、俺たちは新曲のレコーディングを来週に控えていた。
喉を始めとした体調の管理も、当然仕事のうちのこと。
そもそも彼の体調不良のことは、既にマネージャーさんも把握しているそうだし、
彼女の方が色々と段取りは良いはずで、なんなら彼はもう薬まで飲んでいる。
…俺は何に苛立っているんだろう。すごくいらいらする。
なにも間違っていることも、理不尽なこともないのに。
俺がなにも言えないでいると、彼はふいと足を喫煙所へ向けた。

「心配かけてごめんね。…今日は、すぐ家帰るから。」

じゃあね、お疲れさま。と彼が立ち去っても、まだ俺は何も言えなかった。
心底苛立っている自分に、そしてようやっと見つけたその原因のくだらなさに、
はたはた呆れてしまったからだ。


自己嫌悪にはまりながら戻っている途中で、宮永さん、と高い声に呼ばれた。
――あぁもう、なんだっていうんだ。
その声に憂鬱な要素がプラスされつつも、俺はおくびにも出さずに振り返る。
まさに今(勝手に)苛立っていた――北くんのマネージャーさんの、津久井さん。
ジーンズにタンクトップ、彼女のとても快活そうなスタイルはいつも通り。

「…お疲れさまです。」
「お疲れさま。ごめんなさい、今ちょっと時間いいですか?」

今日の仕事は終了していたので頷くと、5分で終わらせると彼女は言った。
(こちらはそんなに急いでいなかったが)彼女のこういう物言いはとてもやりやすい。
ひとの目が気になったらしく、彼女と場所を移動しながらも、
俺はどこか鬱々とした気分でその後ろ姿を眺めていた。
自分より頭一つ小さな身長、重たそうな鞄を肩に食い込ませながら、
肩上で短く切りそろえてある髪が歩く度に揺れる。
とても優秀な人だと思う。マネージャーとしてだけではなく、多分、女性としても。
(……ばかみたい。)
自分の思考回路にふつふつと嫌気が差してきたころ、ふっと周りの騒音が遠くなった。
気付けば俺は、あまり来たことのない通路の角に立っていた。
どうやら大分うわの空で歩いていたようだ。
…彼女の用件とはなんだろう。見当もつかない。

「できたら今日、あいつの部屋に寄ってほしくって。」
「え?」

ほんとに申し訳ない!と彼女はまっすぐ頭を下げた。
とっさに俺は、どうリアクションすればいいのか分からなかった。
二人きりなので口調はフランクだけど(そもそも彼女の方が年上なんだし)、
どうやら真面目な話のようだ――かといって仕事の話とも少し違うが。
恐るおそる確認してみる。

「ええっと、あいつって…?」
「北だよ。あいつ今、どっかから風邪もらっちゃったみたいでさ。」
「ああ、そうみたいですね…。」
「だからその、ちょっと部屋に顔出してもらえたらなーって…。」

やはりあれは風邪の影響だったらしい、俺は昼間の彼の様子を思い出す。
すると言っているうちに余計申し訳なくなったのか、再度彼女は頭を下げた。

「勝手なこと言って、ごめんなさい。」

彼女は、俺と北くんの関係を知る数少ない人だったから、
他のメンバーではなく俺に声を掛けたのはわかる。
わかるけれど、…俺は易々と返事をできなかった。

「…でもそういうのって、津久井さんの方がいいんじゃないかな。」

俺なんかより、ずっとさ。


***


ふうっと意識が浮かんだ。
暗い、オレンジ色の光だけがぼんやりと部屋を照らしている。
(あつい、)
寝返りをうとうとした途端、頭の奥がごうんごうんと呻きだした。痛い。
(…かぜ、だな。かんぜんに。)
ちくしょうどこから拾ってきた、とぼんやり回らない頭で考える。
けれど熱に浮かされたそれで答えが出るはずもなく、考えることを早々に放棄した。
(……そういえ、ば、)
俺は出来るだけ遠くに目をこらして(なるだけ頭を動かしたくない)、そっと耳をすませた。
目が覚めたとき、人の気配がしたような気がしたからだ。
けれどそこにあるのは、見慣れた自分の部屋と、無機質な空調の音だけ。
……気のせいか、とすぐに意識を投げ出した。
頭で物を考えたくなかったのだ。

(…今。なんじ、だろ。)
ああだめだ、考えたく、ないのに。ばか。
左手をほんの少し動かしただけで、こつん、と探りあててしまった。携帯電話。
機能に機能を重ねた現代の必需品。それが嫌いで仕方無いのに。
(やだ。…気に、したくない。)
気にしない気にしない、かんがえない、そうだ忘れよう、寝てしまおう。
そうやって必死に心の中で唱えていたから、部屋のドアの向こうから、

…ぱたん、ぱたん、

と足音が聞こえたのには本当に吃驚した。
やがて足音は近づいて、誰かが静かにドアを開いた。

「…あ、目さめちゃった?遅くなってごめんね、」

「っげほ、ごほッ…、はぁ、」
「無理して声出さないで。大丈夫?」

彼の名前を呼ぼうとしたのに、喉からは耳障りな咳しか出てこなかった。
別に無理なんかしてなかったんだけどな。急に気管が苦しくなって、思わず身体を丸める。
カッコ悪い、まるで芝居みたいにわざとらしいのに、
布団越しに感じた手のひらに、何かがほろりと外れてしまいそうだ。



--------------受信トレイ(1/1500)--------------------
20xx/08/03 22:12
from.ジンくん
sub:今日の夜、部屋行きます。

多分23:30ごろになると思う。
迷惑だったらごめん。
体調悪いんだから、先に寝ててください。
-END-
-----------------------------------------------------------


(ほんと、に)

(来てくれたんだ。)

「北くん、エアコン下げ過ぎだよ。温度上げといたからね。
 あとそこにあった、今日着てた服かけといたよ。シャツは洗濯だけど。」

ふぅふぅと呼吸を整えながら、彼の小言(といったら怒られそうだ)を聞いていた。
聞き慣れた声は耳からするりとしみ込んでいく。

「水、ここに置いとくね。暑いんじゃない?
 保冷剤持ってきたから、首にあてるといいよ。」

言われるがまま、ほんの少し頭を上げると、首もとにタオルを当てられた。
ひんやりとした程よい冷たさが気持ちいい。
だるさとか熱っぽさとか疲れとか、そういう嫌なものがゆっくりと吐き出されていく。
(あー、なんか…)
ゆるゆると腕を持ち上げて、顔を覆い隠す。
触れた頬が熱いような気もするけど、手のひらの方が熱いからよくわからない。
彼が不思議そうに俺を見ている。

「どうしたの、気分よくない?」
「ううん。」
「…ごめん、やっぱお節介だっ」
「ちがいます。そんなことない…。」

なんでそういうこと言うかな嬉しいに決まってんじゃん、なんて言う気力が今は無い。
無いけれど、でもどうやら彼は俺の言葉を待っているらしかった。
熱で浮かれた頭の中、思考と言葉はバラバラのジグソーパズルみたいにごちゃ混ぜだ。
誰もピースをはめてくれやしないし、組み立てるのがめんどくさい。
もういいや。

「…世話かけて、ごめん。」
「気にしないでいいよ。」
「久しぶりなのに。」
「…そう、だね。」
「…………。あー、もう…やだ…。」
「北くん?」

じわり、じわりと胸の奥がむずがゆい。
頭痛のように不快なものではないが、それでも無視できないくらいの気持ち。
(うれしい、から、)
今すげー顔ゆるんでてだらしないから見ないでください、
って言う前に顔を覗き込まれてしまったのは、不覚だったかもしれない。
けど、指の間から見た彼の顔もふにゃりと笑っていたものだから、どうでもよくなった。
…今みたいなのは結構めずらしい。

「はぁー…。さっさとなおそ…。」
「そうしてください。」

布団を被り直しながら壁側に寝返りをうった。
ぐるりと頭を動かしたものの、頭の奥は随分と静かにしている。
この分だときっと、明日の仕事も問題ないだろう。

(くそ、キスしたかった…。)

おやすみ、と彼の声が聞こえた。
今夜はよく眠れそうだ。


***

『津久井さんの方がいいんじゃないかな。』
『そんなことないよ。』
彼女の否定は、早かった。
『マネージャーと恋人は違うでしょ?』
何を今更、とでも言う風に彼女は言った。
それでも俺は納得いかない顔をしていたんだろう、彼女はさらに続ける。
『少なくとも北は一緒にしてないし…。
 っていうか、早いとこ風邪が治ればなんでもいいんだけどね。』
最後に彼女は、困ったように首を傾げながら話を終えた。

『あいつ、結構甘えたじゃない?普段カッコ付けだけどさ。』

彼女が俺に割いた時間は、本当に5分間だけだった。





それはとても些細なことばかりだった。

たとえば、なんでもない言葉。
『…今日は、すぐ家帰るから。』
(別に、知らせる必要なんてないのに。)

たとえば、付けっ放しだったサイドライト。
(いつも彼は、部屋を真っ暗にして眠るのに。)

たとえば、眠っている顔の目と鼻の先に転がっていた携帯電話。
(見るのも嫌だと、あれだけ毛嫌いしているものなのに。)

もしかしたら勘違いかもしれない、思い込みでしかないかもしれない。
でもそれは少しずつ確実に、胸の中をあたたかくしてくれて、
無意識に口角が上がってしまう。
明日の朝食の準備を終えて、さて自分も寝るかと思ったときに、
ふと携帯電話がちかちか光っているのに気がついた。
(なんだろ、津久井さんかな。)


--------------受信トレイ(1/2987)--------------------
20xx/08/03 22:18
from.北 理人
sub:Re:今日の夜、部屋行きます。

今部屋ついたよ。
待ってる。
-END-
--------------------------------------------------------------


「うそっ…?!」

思わず携帯を落としそうになるくらい動揺してしまう。
まるで熱をうつされたように、顔が熱くてあつくて仕方が無かった。
(だってこんな、そもそも返信なんて滅多にないのに…っ、)
薄暗い台所で、しばらく立ち上がれなかったことを、
彼は知る由もないんだろう。





おしまい!


----

・朝食の用意=お手製お粥 ←妄想本命だったところ
・ほんとはジン君が「ソファ借りるね」「えっなんで」「寝るから」
 「ばかじゃないのそれこそ風邪ひくわ」っていうやり取りの元
 きたと一緒のベッドで寝るっていうくだりがあった
・どうでもいいけど多分きたの風邪の原因は冷房の当たり過ぎ

ちょっと北マネの設定ができつつあるのでよかったー。
ちなみに名前は津久井智子(漢字は今決めた
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